12年目の三陸に、海を見に行く

三陸に、2年ぶりに海を見に行く。

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日程の都合で、たまたま東日本大震災からちょうど12年目に再訪することになった。宿は岩手県宮古市に2泊。

3月10日(金)。三陸自動車道を北上して、道の駅大谷海岸へ。震災前はたびたび海水浴に来た。震災後も何度か来ている。

車で10分ほどの「気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館」へ、初めて行った。被災した高校の建物を保存している。最初に巨大スクリーンで当時の津波の映像を13分間見てから、校舎を巡る。

再び三陸道に乗って宮古へ。そしてまず浄土ヶ浜へ。レストハウスの前の海水浴場の岩が午後の陽を浴びて、変わることなく美しい。今回の目当ての一つが、夜もう一度ここに来て星を見ることだ。

今回は宮古港に面したホテルアートシティに連泊する。チェックインを終えたら、堤防のゲートを通って港へ出る。徒歩3分。魚市場、道の駅、遊覧船の発着場がある。

非常時にゲートが閉まっても、階段を上って堤防を越えることができる。下の写真は堤防の上からの眺め。

この日の日没は午後5時半頃。再び浄土ヶ浜へ向かう。車を第3駐車場に駐め、懐中電灯を頼りに浜まで歩いて降りる。灯りは営業時間が終わったレストハウスの周囲だけだ。星がきれいで、岩の上には北斗七星が「?型」に見えた。コンパクトデジカメで撮った下の写真ではほとんど分からないが…。

明けて3月11日(土)。朝は夜明けの浄土ヶ浜を歩き、午前は三陸鉄道に乗り、午後は再び(計4回目)浄土ヶ浜の周辺を歩く。

朝5時半にホテルを出発。第1駐車場から歩いて浜へ降りる。今回は乗らなかった、前年に就航した新しい遊覧船。もう明るいが、まだ陽は上っていない。船の上に見えているのは、西に沈もうとしている月だ。

この日の日昇時刻は午前6時の少し前。太陽は水平線からではなく、重茂(おもえ)半島から上る。東日本大震災から12年目の朝日が、水面のさざ波に映る。

6時。サイレンが鳴り響き、宮古市の防災訓練が始まった。「これは訓練です」「大地震が発生しました」「津波警報が発令されました」と防災無線から相次いで声が響き渡り、消防車が出動する。ホテルに戻ると、堤防のゲートは閉じられていた。

朝食後すぐに出発し、宮古駅の東駐車場に車を駐める(24時間まで500円)。三陸鉄道の久慈行き7:52発に乗る。宮古〜久慈間の1日フリー乗車券2,600円を使って往復。2年前には釜石から2度に分けて、宮古までと盛(大船渡)までを往復した。今回で三鉄の全線に乗車することになる。私は断じて乗り鉄ではないが、列車に乗っているのは大好きだ(たとえトンネルが多くても)。

9:28久慈着。昼食には三鉄久慈駅の名物うに弁当を食べてみたかったが、前日電話すると「もう予約分はいっぱいです。明日直接来てもらっても売り切れているかもしれません」とのこと。列車を降りてまっすぐ店に向かったが…「売り切れ」の紙が貼り出してあった。

1時間ほどすると、宮古に戻る列車が出る。残念だが海辺まで行く時間はない。久慈川沿いを歩いてアンバーホール(市民文化ホール)を目指す。

手前の円錐形に入り口があり、エレベーターで最上部の展望台まで登れる。そこから海を見た。また歩いて駅まで戻り、10:39発に乗る。朝早かった往路と違って、さすがに乗客が多い。12:14宮古着。駅に隣接した「さんてつ屋」で買い物をする。

いちどホテルに戻り、地震が起きた時刻の少し前に出発する。また浄土ヶ浜の第3駐車場に車を駐める。当初は、この時間に出る遊覧船に乗ろうかとも思った。しかし一人で歩き、一人で黙祷しようと考え直した。剛台展望台に登って、降りる。浄土ヶ浜大橋を渡る。橋の下は川ではなく、蛸の浜の集落だ。その突堤の向こうを、遊覧船が行くのが見えた。

橋の向こうに遊歩道の入口があり、そこから降りていく。ここは「みちのく潮風トレイル」のコースになっている。左へ行くと山道に入り、グリーンピア三陸みやこに至る。しかし今回は右へ進み、蛸の浜集落の墓地を抜ける。午後2時46分。宮古市の防災無線が黙祷を呼びかけ、1分間サイレンが鳴った。海に向かって目を閉じる。

車でも、ホテルの前から続く道を北上し、大橋の下を通って突堤のそばまで行くことができる(Googleマップのストリートビューでも見られる)。しかし歩いて行けば、岩の中のトンネルを抜けて浄土ヶ浜側に出る楽しみがある。実は蛸の浜もトンネルも、私は初めてだった。

上の写真は浄土ヶ浜側。レストハウス前に出るので、第3駐車場まで上って戻る。1時間ほどで回ることができた。

3月12日(日)。夜明けを待って港を歩く。

魚市場や道の駅の先に続く公園を歩き、戻って堤防の上への階段を上る。避難路は国道をまたいで渡り、漁協のビルへと続いていた。

この日は朝9時から、この港を会場に毛ガニまつりが開催される日だった。しかし私は、人が多い場所はあまり得意ではない。車も混むだろう。朝食を食べて7時半にチェックアウトし、そのまま宮古を離れた。三陸道から釜石道に入り、花巻で「宮沢賢治イーハトーブ館」に寄り、予約していた図書室で1時間ほどを過ごし、東北道を使って帰宅した。